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政治・経済情報

ホンジュラス内政・外交月報 〈2009年9~12月〉  

Ⅰ.内政

1.基本的人権の一部を制限する政令
(1)9月28日、反乱を推進するグループを前に市民の生命、財産等を守るため、国民の基本的人権の一部(通行や集会の自由、マスコミ報道の制限等を含む)を45日間制限する政令が発出された。これにより、国軍・警察の介入によりセラヤ支持を表明していたテレビ局「CANAL36」及びラジオ局「RADIO GLOBO」が放送停止となった。
(2)9月30日、最高選挙裁判所(TSE)は、11月に実施予定の総選挙の正統性を低めるとの理由から、行政府に対して右政令を廃止するよう要請した。
(3)10月5日、ミチェレティ「大統領」は、閣議において右政令が廃止された旨発表し、17日付官報に掲載され廃止が発効した。政令廃止を受け、テレビ局「CANAL36」及びラジオ局「RADIO GLOBO」の放送が19日より再開された。

2.セラヤ大統領の動向
(1)セラヤ大統領の帰国
9月21日、セラヤ大統領は突然秘密裡に帰国し、当地ブラジル大使館に立てこもった。右を受け、同日、ミチェレティ「大統領」はブラジル政府に対しセラヤの引き渡しを要求した。
(2)セラヤ復職問題
12月2日、国会でセラヤ復職に関する審議が実施され(審議の模様はテレビ中継された)、国会議員128名の内111名がセラヤの解職につき記載した6月28日の議決を再確認する動議に賛成し、セラヤの復職は否決された(反対票を投じたのは14名、審議欠席は3名)。
(3)セラヤ大統領のメキシコ行き頓挫
12月9日夜、当地メキシコ大使館はセラヤ大統領をメキシコに迎え入れようと試みたが失敗した。ロペス当地「外相」によれば、9日夜メキシコ政府から当地外務省に対し、セラヤ大統領をメキシコに迎え入れるための渡航許可証発行申請があったものの、右許可証発行に必要なホンジュラス国内の法的条件を充たしていなかったため、拒否された。セラヤ大統領は、「暫定政権側が自分の辞任を条件としてきたので、メキシコ行きは取り止めた。」旨述べた。

3.国内対話テーブル
(1)10月7日、OASミッション主導によるセラヤ派・ミチェレティ派間の国内対話テーブル(別名"Dialogo Guaymuras")が開始された。
(イ)対話の主要出席者
(a)ミチェレティ側代表団:コラレス・キリスト教民主党幹部、モラレス前最高裁長 官、アギラル法律専門家
(b)セラヤ側代表団:メサ内務大臣、メヒア労働大臣、バラオナ労組代表
(c)インスルサOAS事務総長及び各国外相、外務次官等
(d)シャノン米国西半球担当次官
(e)フェルナンデス国連事務総長政治担当補佐
(f)次期大統領候補者4名
(2)対話では、セラヤの復職が残された最大の課題となり、ミチェレティ派からの呼びかけに対しセラヤ側が応じなかったこともあり、対話は困難を極めた。
(3)10月28日、シャノン国務次官補(西半球担当)、ケリー国務筆頭次官補代理(西半球担当)及びレストレポNSC上級部長(西半球担当)が政治危機解決のためホンジュラスを訪問し、セラヤ派及びミチェレティ派代表団と駐ホンジュラス米国大使公邸で会談した。またシャノン次官補は、セラヤ、ミチェレティ両氏とも個別で対談した。
(4)10月29日、ミチェレティ及びセラヤ派代表団は事前に最高裁の見解を聴取することを前提に、セラヤの復職の可否について国会が決定する旨の合意に達した(テグシガルパ・サンホセ合意)。
(5)署名された合意点は以下のとおり。
(イ)統合と和解のための政府設置
(ロ)恩赦は適用しない
(ハ)制憲議会を実施しないこと、及び改正不能な憲法条項の改正を試みない
(ニ)選挙を承認し、政権交替を支援する
(ホ)本合意諸点の履行に向けた監視委員会の結成
(へ)6月28日以前と、当日及び以後の出来事に関する真実究明委員会の結成
(ト)ホンジュラスとの関係正常化を国際社会に要請する
(チ)6月28日以前の行政府の長への復帰につき事前に最高裁の見解を聴取することを前提に、国会に決定権限を与える

4.総選挙
(1)ミチェレティの一時的な公職離職
11月20日、ミチェレティは11月25日から12月2日迄職務の行使から一時的に離れる旨決定したと発表した。
(2)11月29日、総選挙が平穏裡に実施された。
(3)12月21日、最高選挙管理裁判所(TSE)は、11月29日に実施された総選挙の最終結果を発表し、ロボ国民党候補の当選が決定した。なお、大統領選挙への投票率は50%(約230万人)であり(有権者数は約460万人)、前回選挙より5.4%低下した。

■大統領選挙
(イ)ロボ国民党候補           56.56%(1213695票)
(ロ)サントス自由党候補         38.09%( 817524票)
(ハ)マルティネス革新統一党候補     1.86%(    39960票)
(ニ)アビラキリスト教民主党候補     1.79%(    38413票)
(ホ)ハム民主統一党候補          1.70%(    36420票)
小計                            2146012票
白票                              61440票
無効票                              92604票
計                              2300056票

■国会議員議席数
(イ)国民党                       71議席
(ロ)自由党                         45議席
(ハ)キリスト教民主党                                     5議席
(ニ)民主統一党                     4議席
(ホ)革新統一党                     3議席
計                           128議席

■市長職
(イ)国民党                      191市長
(ロ)自由党                      104市長
(ハ)キリスト教民主党                  2市長
(ニ)無所属                        1市長
計                           298市長

Ⅱ.外交

1.対国連関係
(1)国連によるTSEに対する技術支援停止
 9月23日、潘国連事務総長は、ホンジュラスの平和と安定に貢献するような信頼のおける選挙が実施される条件が整っていないとし、国連によるTSEに対する技術支援を停止すると発表した。
(2)人権状況に関する国連調査ミッションの来訪
 10月18日、ホンジュラスにおける人権状況を調査するミッション(国連人権高等弁務官事務所より派遣)が当国を訪問した。

2.IMFによる対ホンジュラス経済関連
 9月1日、IMFは、G20が金融危機対策として発表した融資の一貫として、ホンジュラスに対して163.9百万ドルの融資(特別取引権(SDR)の付与)を行ったと発表。7日、ヌニェス「財務大臣」は、右融資は既に中銀に振り込まれており、政府の決定に従い使用可能であると発言したが、8日、IMFの渉外担当David Hawley氏は、IMFがデファクト政権を承認するまでは同融資は使用不可能であると発表した。

3.対米関係
(1)セラヤの米国訪問
9月2日、クリントン米国務長官との会談及びOAS会合出席のためワシントンを訪問したセラヤ大統領は、米国政府が6月28日に起こった政変を「クーデター」と宣言すること、及びミチェレティ「政権」下で行われている人権侵害を明確に非難することを期待すると発言した。これに対し、ミチェレティ「大統領」は、セラヤ大統領が米国でホンジュラスに対する制裁を要請していることに遺憾の意を表明した。
(2)米政府による経済援助停止
9月3日、米国務省は、6月28日に起こったクーデターの結果として、ホンジュラス政府に対する経済協力の停止等に関するプレスリリースを発出した。右プレスリリースは「停止された援助の再開はホンジュラスにおける民主的、合憲的な政府の復帰に基づくことになろう」と言及した。
(3)ミレニアム開発基金による経済協力停止
9月9日、米国による主要援助スキームであるミレニアム開発基金はホンジュラスに対する経済協力の内、11百万ドルに及ぶ運輸関連プロジェクト2件と世銀やIDBとの共同プロジェクト(道路建設、総額4百万ドル)の合計3件のプロジェクトに対する経済協力を停止すると発表した(但しこれまでに契約が締結されたプロジェクトについては続行)。また米国務省はホンジュラス中央政府と関わりなく国民が直接裨益する人道分野のプロジェクトは継続する旨発表した。
(4)米国大使館における査証発給開始
当地米国大使館は、11月2日付で、非移民ホンジュラス人に対する査証発給を開始した(当地米国大使館は、8月26日からホンジュラス人に対する査証発給を一時停止していた)。
(5)ケリー米国務次官補代理のホンジュラス訪問
(イ)11月10日、セラヤ、ミチェレティ両者との会合を目的にケリー米国務次官補代理がホンジュラスを訪問し、セラヤ、ミチェレティ両者と会合した。11日、ケリー次官補代理はホンジュラス政治危機の解決は、次期政権が選出される29日の総選挙を通じてなされるとの見解を示し、国際社会の支援を取り付けるためにも合意を履行することが必要であると発言した。
(ロ)11月17日、ケリー次官補代理は再びホンジュラスを訪問し、ミチェレティ及びセラヤと会談した。翌18日、ケリー次官補代理は、米国はテグシガルパ・サンホセ合意の履行に向けて今後も協力を続けると発言した。
(6)米国による渡航注意情報の解除
米国政府は12月8日、6月28日の政変以降米国民に対して発出されていた当地への渡航注意情報(不要不急の当地への渡航をしないよう勧めるもの)を、治安状況回復に鑑み解除した。
(7)12月9日、クリントン国務長官はロボ次期大統領に対し当選の祝辞を送るとともに、国内対話を続けるよう要請した。

4.中南米諸国との関係
(1)ブラジル
(イ)ブラジル政府による査免停止
9月3日、ブラジル政府はホンジュラスとの査証免除取り決め停止する旨発表し、5日以降ブラジルに入国するホンジュラス人は査証を取得しなければならないこととなった。
(ロ)10月28日、ロペス「外相」は、ブラジルが駐ホンジュラス・ブラジル大使館にセラヤを滞在させてホンジュラスの内政に干渉しているとし、本件につき国際司法裁判所に訴えると発表した。
(ハ)11月18日、アルゼンチン及びブラジル政府は、セラヤが復職しない限り29日の総選挙及びそれ以降誕生する新たな政権を承認しないと発表した。両国のフェルナンデス大統領及びルーラ大統領は「デファクト政権により実施される選挙の結果は承認しない」旨の共同宣言に署名した。
(2)コロンビア
11月9日、コロンビア外務省はコミュニケを発出し、10月30日のテグシガルパ・サンホセ合意文書署名を受け、6月28日の政変以降本国に召喚されていたペレイラ駐ホンジュラス大使を再度任国に派遣する旨発表した。
(3)コスタリカ
12月8日、コスタリカを訪問したロボ次期大統領は、アリアス・コスタリカ大統領及びマルティネリ・パナマ大統領と会談した。右会談において「ア」コスタリカ大統領及び「マ」パナマ大統領は国際社会から次期政府への承認を得やすくするための条件としてテグシガルパ・サンホセ合意の履行(①国内統一和解政府の成立、②政治恩赦の実施及び③真相究明委員会の発足)を掲げた。

5.スペイン政府によるホンジュラスの国家機関関係者に対する入国禁止措置
9月16日、スペイン政府はホンジュラスの国家機関関係者に対する入国禁止措置を発表した。対象となったのはサアベドラ国会議長、リベラ最高裁長官、ルビ検事総長、セビージャ「国防大臣」、ヌニェス「財務大臣」、ボナノ「公共事業大臣」等10名である。

6.OASミッションのホンジュラス来訪
(1)10月7日、OAS外相ミッションはホンジュラスを訪問した。同ミッションは記者会見において、国内対話テーブルが政治危機を解決し、ホンジュラスの民主体制の回復に貢献するであろうとの見通しを示した。ミッションはホンジュラス滞在中にミチェレティ、セラヤ及び各党大統領候補等と会談した。
(2)10月8日、ビエルOAS事務総長補佐は、同ミッションからの依頼事項として、ミチェレティ暫定政権にセラヤ大統領をブラジル大使館ではなく適切な場所に移動させるよう要請した。右要請について、9日、ミチェレティ「大統領」は、セラヤは自分の意志で同大使館にいるのであって、ミチェレティ側が何らかの強制を行ったわけではないため、OASの求めには応じないと発言した。

7.ホンジュラスのALBA脱退
(1)12月15日に召集された「閣議」において、ALBAがホンジュラス国民に利益をもたらさず、チャベス・ベネズエラ大統領のみに資しているとの理由からALBAを脱退する旨の決定がなされた。同決定は国会での承認を得るために同日中に国会に送られ、これを受け国会は本件審議に関する委員会を設置した。ただし、ピネダ「大統領府大臣」の16日の発言によれば、ホンジュラスは今後もペトロカリブには加盟し続ける。
(2)12月17日、ロボ次期大統領は、ホンジュラスのALBA脱退については国民党議員及び自身が大統領を務める次期政権も支持すると述べ、ALBAにプライオリティを置いていないため自身の政権で再加盟する予定もないと発言した。


在ホンジュラス日本国大使館, Col. San Carlos, Calzada Rep. Paraguay, Tegucigalpa, M.D.C., Honduras, C.A.
(Apartado Postal 3232)
TEL : (504)236-5511
FAX : (504)236-6100