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健康・医療豆知識

 

破傷風について

 

怪我をした時、特に野外で傷口に土が付くような「汚い怪我」をした時に、念頭に置かなければいけない疾患が破傷風です。現代日本では三種混合 ワクチン等の普及により発症者をみかけることはほとんどなくなりましたが、ホンジュラスを含む発展途上国ではいまだに多数の患者が発生しているものと推定 されています(発展途上国全体で年間数10万~100万程度)。そしてその多くは死亡します。今回はこの破傷風について解説します。

1.原因、感染経路
土壌中に棲息する嫌気性の破傷風菌 (Clostridium tetani) が、傷口から体内に侵入することで感染を起こします。破傷風菌は、芽胞(熱、消毒薬等に対し極めて強い耐久性を示す状態)として自然界の土壌中に広く常在 しています。多くは自分で気づかない程度の小さな切り傷から感染します(2割程度)。ワクチンによる抗体レベルが充分でない限り、誰もが感染し、発症する 可能性があります。芽胞は傷口で発芽し増殖します。ヒトからヒトへは感染しません。

2.症状、予後
破傷風菌は体内で毒素を産生します。その結果、重症の場合は全身の筋肉麻痺や強直性痙攣(硬く突っ張るような痙攣発作)を引き起こします。
一般的な前駆症状は、肩が強く凝る、口が開きにくい、舌がもつれ会話しづらくなる、顔面の強い引きつり等です。徐々に、喉が狭まり硬直する、歩行障害や全 身の痙攣(特に強直性痙攣により、手足、背中の筋肉が硬直、全身が弓なりに反る)等の重篤な症状が現れ、最悪の場合、激烈な全身性の痙攣発作や、脊椎骨折 などを伴いながら死に至ります。感染から発症までの潜伏期間は3日~3週間です。
破傷風の死亡率は約50%です。成人でも15~60%、新生児に至っては80~90%と高率です。新生児破傷風は生存しても難聴を来すことがあります。

3.治療
治療として、破傷風菌に対する抗生物質(ペニシリン系、テトラサイクリン系、メトロニダゾール等)の投与が行われます。しかし抗生物質はすでに体内で産 生された毒素に対しては効かず、毒素の中和には破傷風免疫グロブリンを用います。破傷風は治っても免疫が形成されないので、回復後に破傷風の予防接種を一 通り受ける必要があります。

4.予防
予防接種により行われます。不活化ワクチン(沈降破傷風トキソイド)が用いられ、日本では小児定期接種の三種混合ワクチン(DPT)、二種混合ワクチン (DT) に含まれています。 ただし、1968年以前は破傷風を含まないDPワクチンが主に使用され、また1975年~1981年には副作用によりDPTワクチン接種が中断されていた ので、その時期に生まれた者は破傷風の予防接種を受けていない可能性があります。
このほか、検疫所等で海外渡航者向けの予防接種を有料で行っているほか、動物に咬まれた場合にもワクチンの事後接種が推奨されています(この場合は狂犬病等もケアする必要があります)。
予防接種は標準で3回の接種を行います。1回目、その1ヶ月後に2回目、1年後に3回目の接種を行います。これで4~10年ほど免疫が得られます。時間 経過で免疫が失われても接種後25~30年であれば1回の予防接種で免疫が再び成立するとされています。それ以上の間隔が開いてしまった場合には最初から やり直す必要があります。

5.まとめ
予防接種を受けていない方、前回予防接種から相当期間が経過して免疫が失われていると思われる方は速やかに予防接種を受けましょう。回数等については上記4.を参考にして下さい。
動物に咬まれたり傷口が土で汚染されるような怪我をした場合には、傷口を可能な範囲で良く洗いましょう。医療機関を受診し、必ずその旨を申告しましょう。

                                                                   

 


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