福田大使ご挨拶
令和3年9月30日
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この度、帰朝発令を受け、十月五日に、約三年三か月に渡る駐ホンジュラス特命全権大使としての任務を終え、日本に戻ることとなりました。
本来ならば、お世話になった、ホンジュラスの各界や在留邦人の方々をお招きし、お一人お一人に直接ご挨拶させていただきたいところですが、当地のパンデミックの状況を踏まえれば、未だそのような規模の会合を開催する状況ではないと認められるため、ご容赦願うことといたしました。
私は、在任期間を通じ、各界各方面の方々との交流に努めるとともに、開発協力案件の実施機会等を通じ、できるだけ僻地など各県各地域に赴き、豊かな自然や文化等に触れるとともに,当国の実情等の体得に努めてまいりました。いずれの土地土地でも、人々は温和で高いホスピタリティーで接していただきました。その好意に感謝するとともに,日本の文化に対する親しみや規律遵守への尊敬の念に触れ,日本への信頼と良好な対日感情のもと,両国関係の一層の発展、深化の可能性を確信しました。
具体的に振り返りますと、
(1) 赴任直後の2018年8月には、衆議院国土交通委員会代表団がジョロ県やコパン県等を訪問されたほか、翌2019年3月には当時のアグエロ外相が訪日され、また、外交関係樹立85周年に当たる昨年2020年1月にははじめての外務副大臣として鈴木副大臣が来訪されたほか、12月にはTV会議形式で政策協議が開催されるなどハイレベルでの交流が強化されました。
(2) 85周年関係で申し上げると、昨年2月には、日本から阿波踊りグループの客演にあわせ、ロサレス外相と共同でMIN博物館で85周年記念文化事業を開催するとともに、同年3月はじめには、我が国の支援で改修がなされたフアナライネス公園のオープン・セレモニーが、エルナンデス大統領のご出席を得て盛大に実施されました。さらに、同年3月中旬には、当国を代表するコパン遺跡を会場に博物館改修プロジェクトの調印式を執り行いました。
残念ながら、その直後からパンデミックになり、会場を利用した文化行事の実施は困難となりましたが、SNSを活用し、周年記念ビデオの上演、中村金沢大学教授によるWebinar開催、「米百俵」のビデオ再上映などを積極的に行い、好評でした。
一般コンクールを通じて作成したグアカマヤと太陽をかたどった記念ロゴ、ロゴ・バッジもホンジュラスの人々に非常に好感をもって受け入れられ、長い友好関係の象徴として、優れたPRになりました。
(3) 開発協力関係で申し上げると、昨年からのコロナ禍に対する緊急支援、熱帯暴風雨被害に対する緊急支援・復興支援で、総額約40億円に上る無償資金協力を行い、各種保健医療機材の供与、教育病院へのMRIの供与、学校再開計画への支援、コリドール・セコにおける食糧生産強靱化支援、国連フラッシュ・アピールを踏まえた緊急人道支援、コパン遺跡の観光復興計画、南部バジェ県国道1号線グアシロペ橋の架け替え計画などを実施してきました。先日、九月二八日には、ロサレス外相との間で、一億米ドルに上る新型コロナウイルス感染症危機対応緊急支援円借款供与の署名を行いました。各分野で経済復興が加速することが期待されます。
また、コロナ禍にあっても、草の根無償資金協力を通じた地方の小学校の改修や保健所の改修、電化計画の推進は着実に進めており、また、当国初となるラパエラ市のポリクリニックの新設、国道6号線地滑り防止工事、コマヤグア市の上水施設の新設なども順調に完成し、引き渡しを行いました。
さらに、日本の国際NGO、AMDAと連携して行っているエル・パライソ県を中心とした母子保健等を中心とした支援も地道ですが重要な案件です。
このように、パンデミックにより外交活動にも一定の制約がありますが、迅速な緊急人道・復旧復興支援などで我が国のプレゼンスが高められたのではないかと考えております。
なお、コロナ禍の関連で申し上げると、昨年3月、パンデミックとなるや、邦人保護の観点から、直ちに個々の在留邦人との直接コンタクトに努め、技協関係者など短期在留者を中心に帰国希望者に対する迅速な本国帰還支援が実施できたことは幸いでした。
(4) 東京オリ・パラ2020で申し上げると、ホンジュラスからは、サッカーをはじめ、水泳、柔道、マラソンなど多くの選手・役員がオリンピックに参加したほか、パラリンピックにも、陸上競技に参加し、活躍しました。
サンペドロスーラ市で開催されたサッカーチームの壮行会には、私も参加し、エールを送ったほか、日本での実際の試合では、茨城県鹿島市の小学生がスタジアムで応援し、友好関係を盛り上げました。
今後も、ホスト・タウンである群馬県片品村との交流が期待されます。
本年は、ホンジュラスをはじめ、中米諸国にとって、スペインからの独立200周年の記念の年であり、先日、9月15日、スペインからの独立200周年の式典が開かれました。日本のJAXAの支援でUNAH大学が打ち上げを計画しているホンジュラス初の人口衛星、モラサン計画の準備も進行しています。
今後、11月にかけて、日本、ホンジュラスとも総選挙が予定されています。
本年も、早、残すところ三か月になりましたが、将来に向けた希望の年となるよう、願っております。
私は、在任を通じて、ホンジュラスは、比較的若くかつ人口約千万人弱の国ですが、様々な課題を乗り越え、将来の自律的な発展に向けたポテンシャルの高い国であると確信しています。
4年後の2025年は、大阪万博開催予定であり、外交関係樹立90周年にも当たります。
日本とホンジュラスとの友好関係が、さらに一層強固なものとなるよう、様々な分野で一層の両国関係の発展と深化を祈念します。
最後にひとこと申し上げます。昨年3月、コパン遺跡でプロジェクトの調印式を行った際に、記念にセイバの苗木の植樹を行いました。先日、再訪した際にみると、まだ大きくはありませんでしたが、しっかりと根をはっていました。今後、この木のように、日本とホンジュラスの友好関係が一層大きく育つことを期待するとともに、5年後あるいは10年後、この木がより大きくなった際に、再訪できればと思っています。
令和3年9月吉日
駐ホンジュラス特命全権大使 福田 紀夫
~令和2年1月~2018年7月に着任し,約1年半が経過いたしました。この間,我が国の開発協力プロジェクトの引渡し式等を通じて,全国18県中,16県を訪問し,豊かな自然や文化等に触れるとともに,様々なイベント等の機会を用いて広くホンジュラス国民との交流に努めてまいりました。その際,多くの人々から示された好意に感謝するとともに,日本の文化に対する親しみや規律遵守への尊敬の念に触れ,日本への信頼と良好な対日感情のもと,両国関係の一層の発展を確信しました。
具体的には,外交面では2019年3月のアグエロ外相(当時)の訪日をはじめハイレベルでの交流がなされるとともに,国際場裡における重要なパートナーとして協力関係の強化が図られました。
開発協力面では,人間の安全保障の中核である防災・教育・保健の分野を中心に様々な協力がなされ,特に貧困地区の学校・保健施設改修等を行う草の根無償案件は目に見える協力として地元から大きく感謝され,新聞・TV等で必ず報道されています。2004年に始まった「米百俵学校」と名付けられた学校改修は,既に156校に至りました。
加えて,25年振りの円借款案件であるSDGsに即した水力発電所増強計画プロジェクトの具体的な実施に道筋ができ,早期の着工・竣工が期待されます。青年海外協力隊員の活動も両国間関係の増進に大きく貢献し,ホンジュラスへの派遣人数累計は約1,250名と,中南米で最多の数値となっています。
経済面では当国の主要輸出品であるコーヒーの我が国における知名度も高まり,高級品種であるスペシャルティ・コーヒーを中心とした輸出額が増加傾向にあることは歓迎されます。
さて,本年2020年は,日本とホンジュラスの外交関係樹立85周年の記念すべき年に当たります。ハイレベルでの往来が予定されているほか,年間を通じて,日本の伝統文化やポップカルチャーの紹介をはじめとする様々なイベントや事業が計画されています。また,4月には,ホンジュラスからガリフナ民族舞踊団の日本公演も予定されています。
加えて,東京オリンピック・パラリンピックに向けて,去る11月には,群馬県片品村がホンジュラスの「ホストタウン」になることが正式に決定されたところであり,今後,様々な交流が進展することが期待されます。
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ちなみに,85周年に向け,公募を経てロゴ・マークを決定し,様々なオケージョンで利用の予定です。18歳のホンジュラス人大学生からの応募が採択されたものであり,ホンジュラスの国鳥であるグアカマヤと日の丸をイメージしたもので,シンプルですが非常に明るく,かつ,両国の友好関係を的確に表したものです。
今後とも,この国の実情理解に努めていくとともに,政治,経済,開発協力,文化交流など各分野の活動に積極的に取り組み,両国の友好親善関係をより一層,発展させていくとともに,日系企業の活動に対する積極的な支援や,治安情勢の適切な把握・発信等,邦人保護に注力していきたいと考えております。
令和2年1月
在ホンジュラス特命全権大使 福田 紀夫
(略歴)
鳥取県出身。最終学歴,東京大学法学部。人事院入庁後,財務省,在墺大使館,在ウィーン国際機関日本政府代表部,内閣参事官,国家公務員倫理審査会事務局長,人事院公平局長,同人材局長を経て,現職。