第2回 テグシガルパ1 -Tegucigalpa-

令和5年3月16日
「紀行」とは言えないかもしれませんが、普段生活している、日本国大使館のあるテグシガルパについて、ご紹介したいと思います。

テグシガルパは1880年以来ホンジュラスの首都(正確にはテグシガルパに隣のコマヤグエラを加えた中央地区が首都)で、人口はこの国最大の約120万人。
 
標高約1000メートルの高地にあるため、年間を通して、気候は温暖で、気温は14℃~28℃の範囲に収まり、過ごしやすいところです。日本の春秋の気候がずっと続いているようなイメージです。各国の大使たちも、ここの気候は皆気に入っているようです。
 
地形的には、周りを1500m前後の山に囲まれた盆地で、トンコンティン空港はネパールのカトマンズの空港と並んで世界で最も離着陸の難易度の高い空港と言われていましたが、2021年10月に隣の県のパルメローラ空港に国際線のみが移転し、現在は国内線のトンコンティンと役割分担されています。かつての成田と羽田に似ています。
 
歴史的には、1578年にスペイン人が入植して街を設立し、鉱山の街として発展してきたようですが、現在は、首都として、大統領宮殿や国の各府省、中米統合銀行(BCIE)の本部や各国大使館等があり、政治の中心地となっています。
 
残念ながら、治安は決して良いとは言えず、殺人の発生率も最盛期の半分程度になったものの未だに高い水準ですので、注意をする必要があります。ただ、一般の人が無差別に殺されているわけではないので、現地の住民も昼間は街中を元気に闊歩しています。
 
市内の交通は、鉄道がないため、全て車です。日本の都市と比べて、信号の設置箇所が極めて少ないので、信号のない交差点は思い切って割り込む必要があります。遠慮をしているとなかなか曲がれません。公共交通機関はバスやタクシーです。バスはトヨタやHyundaiのマイクロバス、タクシーはほとんどがトヨタのカローラです。現地の人たちは皆使っていますが、必ずしも安全とは言えない状況であることから、大使館としては日本人に対して利用を勧めていません。
 
市内の観光スポットとしては、旧大統領府や国会、国立劇場等歴史的な建造物がある旧市街が、雑然としてはいますが一見の価値があります。また、市内の中心に位置する小高い丘の上にあり、日本もその整備を支援したフアノライネス公園は、首都を一望できる象徴的な場所で、重要なセレモニー等も頻繁に開かれ、テグシガルパの街の全容を見るには良い場所です。
 
 
さらに、中心部から少し山間部に登ったところにあるピカチョという公園も、リオデジャネイロの有名なキリスト像のような両手を広げたキリスト像が設置され、これも日本が増改築した動物園等を併設し、土日になると市民の憩いの場となる風光明媚な場所です。

 
それ以外にもスタジアムに隣接する生鮮市場は、毎週金曜と土曜に開かれていて、野菜、肉、魚等カテゴリーごとにエリアが分かれてどこも賑わっており、市民の活気ある日常生活を垣間見ることのできる場です。

 
テグシガルパでの食べ物ですが、人口の多い首都だけにレストランは数多くあり、和食もいくつかありますが、日本人が経営しているのは「宇佐美」というレストランのみで、大使館員の多くはここのお弁当をランチにしています。ホンジュラス料理のお店も「El Patio」他多数あり、豆(フリホーレス)をこしあんのようにしてトルティーヤにつけて食べたり、調理用バナナ(プラタノと呼ばれています)もこれと一緒につけて食べたりしています。これらもなかなか美味です。
 
また、ホンジュラスは肉料理も多く、高級レストランといわれる店はステーキ屋が多い印象です。赤身のお肉が主なので、量が多くても案外食べられます。価格も日本と比べるとリーズナブルです。
 
ホンジュラスで特筆すべきは、美味しいフルーツがとても安い価格であふれていることです。日本では高価なマンゴーなどもいろいろな種類があり、数百円でとても美味しいものが手に入りますし、自宅の庭にマンゴーやパパイヤ等の木があることも珍しくなく、季節になると自宅で取れたというフルーツを貰ったりすることもまれではありません。
 
普段の買い物は、街中にスーパーマーケットやモールが数多くあり、品揃えも充実しています。モールなどの内部はセキュリティも行き届き、中に入ってしまえば米国のモールに買い物に来ていると錯覚するほどです。日本と比べて品揃えに難があるのは、生魚でしょうか。近海は暖流のみのためか、寒い海にいる脂がのって締まりの良い魚などは米国等からの冷凍ものしか手に入りません。また、カップヌードルのようなインスタント食品は、売ってはいますが日本のものとは別物で、味がほとんどなく、正直美味しくありません。日本の味のレベルの高さが懐かしく思い出されます。これらの物価は日本とほぼ同じレベルで国民の平均所得の大きな差を考えると首都のこうした商業施設に買い物に来ているホンジュラス人はこの国の富裕層に限られ、貧しい人たちは全く別の世界で生活しているという現実に気づかされます。
 
 
中原淳

〇領事・安全情報